女の二人づれの客
しばらく押し問答があった後、その女の二人づれの客は立って帰り支度を始めた。「払わないのなら、警察を呼びますよ」しかし客は無言で店を出ていこうとする。「しっかりしるよ、おまえが払うことになるんだからな」寿司職人がそう言った。客は結局店から出てしまう。ウエイターは外まで追いかけていったが、しばらくしてションボリして戻ってきた。「タクシーで逃げられちまったよ」「大丈夫よ、心配しなくても、お勘定はあなたが払わなくてもいいように、うまくごまかしてあげるから」ここはどうやら、こういうことが起きた場合はウエイターが店に弁償するシステムのようだった。僕が以前働いていた店も、閉店時にマネージャーが請求書を全てチェックし、ウエイターが計算を間違って、お客にアンダーチャージしていた場合は、ウエイターがその差額をその場で払って謝るシステムでした。そう全くウエイターの立場は弱い。お店とお客の板挟みになって、お店のルールにも従いつつ、ある程度それをこっそり越えても、チップのためにお客の要望も聞き入れなくてはならない。嫌なお客でも笑顔で接し、キッチンではそんな無理な要求は聞くなと文句を言われ、店が忙しければ、食事のすんだ客は早く追い出せとマネージャーにプッシュされる蝋お客との間で何か起きれば、ウエイターのせいでなくてもチップが悪くなる。僕がウエイターだった時、一緒に働いていた四○がらみのウエイターがこう言った。「俺はチャイナタウンに行ったら、絶対まともにチップなんか置かないよ、チャイニーズなんか、サービスの何たるや全然分かっちゃねえんだからな」確かにチャイナタウンの安い料理屋に行くと、ウエイターのサービスはお世辞にも良いとはいえない。ニコリともしないし、お皿の置き方は乱暴だし。それはやはり共産圏の中国では、サービスという感覚が薄いこともあるのでしょう。